本作の歌詞の意味を紐解く最大の鍵は、タイトルにも冠された「バッハの旋律を夜に聴いたせいです」という印象的なフレーズにあります。過去の恋人である「君」の幻影や忘れられない記憶に苛まれる深夜、主人公はその苦しさや未練を、あたかも「夜にクラシック音楽を聴いてしまったからだ」と責任転嫁しています。
山口一郎のインタビューによると、深夜に一人部屋で音楽を聴いているときにふと訪れる、説明のつかない感傷や情けない感情をストレートに歌うのではなく、あえてアイロニカルな表現に落とし込んだと語られています。「月に慣れた君」や「夜の帳」といった叙情的な言葉選びと、ダンサブルなビートのコントラストが、主人公の胸中にある理屈では割り切れない混乱を鮮やかに描き出しています。