ネット上の考察やまとめサイトでは、本作に関して2つの代表的な誤解が散見されます。それらを正しく紐解くことで、内海八重が作品に込めた本質がより明瞭になります。
第1の誤解は、「みきおは生まれつきのサイコパスであり、ただの愉快犯に過ぎない」という見方です。劇中での残虐な言動からモンスターとして捉えられがちですが、本質は異なります。みきおを突き動かしていたのは、母親である亜紗子から向けられた歪んだ愛情と実験への「解答義務」でした。彼自身、心の奥底では「誰かに自分の実験を打ち破ってほしい」「人間の真の善性を証明してほしい」と渇望していた節が、ネズに対する執着から読み取れます。
第2の誤解は、「本作はただ登場人物を惨殺するだけの救いのない鬱エンドである」という解釈です。確かに未来をはじめ多くの犠牲者が出た結末は悲惨そのものです。しかし、ネズが最後まで人間としての最低限の一線を越えまいと葛藤し続けたこと、そして生き残った者たちが互いの醜さを知った上で現実を生き抜こうとする姿勢は、完全な虚無ではありません。「人間は弱く醜いが、それでもわずかな善性を手放さずにいられるか」という作者からの痛烈な祈りが、あの結末には込められています。