歩けない少女クララの繊細な心の揺れと成長を演じた吉田理保子さんは、1970年代から80年代にかけて『魔女っ子メグちゃん』のメグ役などヒロイン声優として絶大な人気を誇りました。しかし1998年、惜しまれつつも声優業を引退します。その後は音響制作会社でキャスティングマネージャーやプロデューサーとして手腕を振るい、裏方として日本のアニメ・洋画吹替業界を支える重鎮となりました。
ハイジを厳しくも深い愛で見守った「大人たち」のキャストも、日本演劇界・声優界を支えた巨星ばかりです。
気難しくも心優しいアルムおんじ役の宮内幸平さんは、滋味あふれる低音ボイスで世界観の重石となりました。『ドラゴンボール』の亀仙人役としても広く知られましたが、1995年に逝去。その風格ある演技は、今なお多くの後輩声優のお手本とされています。
フランクフルトのゼーゼマン家でハイジを厳しく躾けようとする家事責任者・ロッテンマイヤー役を務めたのは、麻生美代子さんです。『サザエさん』の磯野フネ役としても親しまれた麻生さんは、厳格さの裏にある神経質さや滑稽さを絶妙に表現し、単なる悪役に終わらない深みを与えました。麻生さんは2018年に92歳で永眠されています。
物語を包み込むように語りかけたナレーションの沢田敏子さんは、洋画吹き替えの名手として活躍。大自然の美しさと人間の営みを客観的かつ温かな眼差しで伝える語り口は、作品の完成度を決定づける重要な要素でした。