かつてW杯の中継では、プレーの合間にスタンドの魅力的なサポーターを大写しにするカットが定番の演出手法でした。しかし、このカメラワークをめぐっては2018年ロシア大会以降、国際機関や放送連盟の内部で方針の大きな見直しが行われています。
FIFAのダイバーシティ部門および放送権を統括するホスト・ブロードキャスト・サービス(HBS)は、性的な眼差しによる女性ファンの過剰なクローズアップを是正する方針を打ち出しました。これは、客席にいる観客を一人の熱心なサポーターとして尊重し、性差別やハラスメントの温床を排除するという近年のスポーツ中継スタンダードに基づいています。
こうした国際映像のトーン変更に対し、サッカーファンのネット上の反応は二極化しました。「スタジアムの華やかさや現地の陽気な空気が薄れた」と寂しさを訴える声がある一方で、「試合の本筋に集中できる」「意図しない形で女性客が世界中に拡散されるリスクを防ぐ適切な配慮」と肯定的に評価する意見が主流を占めるようになっています。
その結果、2022年カタール大会以降は、公式のテレビ中継カメラが特定のセクシーサポーターを執拗に追いかける場面は激減しました。その代わりに、現地観戦者がスマートフォンで撮影した動画や、サポーター本人が発信するリール・TikTok動画が直接アルゴリズムに乗って世界へ拡散されるという、メディア構造の完全な分散化が定着しています。