「なぜ、わざわざズボンを穿かないのか?」という素朴な疑問に対し、モード界が提示した回答は明快です。このムーブメントの決定的な発火点は、ボッテガ・ヴェネタが披露したブラックブリーフ主体のルックや、ミュウミュウ(Miu Miu)が打ち出したスパンコール煌めくマイクロショーツのランウェイ提案でした。下着(アンダーウェア)として隠されるべきアイテムを堂々とアウターとして主役に据える倒錯的なアプローチが、停滞していたモード界に強烈なカンフル剤を注入したのです。
パンツレスファッションの流行理由を紐解くと、以下の3つの要素が複雑に絡み合っていることが分かります。
第一に、Y2K(2000年代初頭トレンド)から続くミニマリズムと肌見せ文化の極限進化です。ローライズデニムやクロップド丈トップスによってウエストやヒップラインを強調してきた文脈が、究極のミニ丈として「ショーツそのもの」に行き着いたのは必然の帰結といえます。
第二に、SNSにおけるアテンション・エコノミー(関心経済)との親和性です。インスタグラムやTikTokなどのプラットフォームでは、一瞬でスクロールを止めさせる視覚的フックが欠かせません。ケンダル・ジェンナーやヘイリー・ビーバーといった海外セレブが、足元をシアータイツ1枚で包み、堂々とロサンゼルスやニューヨークの街を歩く姿は瞬く間にバイラル化し、世界中で爆発的なインプレッションを記録しました。
第三に、テーラリングの脱構築によるシルエットの再定義です。上半身にはあえてメンズライクな重厚感あるオーバーサイズジャケットやロングコートを羽織り、下半身を潔く削ぎ落とすことで、かつてない「逆三角形のプロポーションの美しさ」を構築できます。ただ脱ぐのではなく、着崩しの緊張感を楽しむというハイファッション特有のコードが、高感度なファッショニスタを熱狂させた本質的な理由です。