ネット上の情報や知恵袋などで頻繁に目にするのが、「犬の肉球には人間用のワセリンを塗れば十分」という言説です。果たして犬の肉球にワセリンは安全かという疑問に対し、獣医学的な観点から正確な事実を整理する必要があります。
結論として、純度の高い白色ワセリン自体には毒性がなく、微量を犬が舐めてしまったとしても中毒を引き起こすリスクは極めて低いです。しかし、ワセリンはあくまで皮膚表面を油膜で覆い、外部刺激から守り水分の蒸発を防ぐ「保護剤」に過ぎません。すでにカサカサに乾燥しきった肉球にワセリンだけを塗り込んでも、内部に水分を補給する保湿効果は得られないのです。さらに、多量に舐め取ってしまうと消化不良や軟便、下痢を引き起こすリスクがあります。
もうひとつの大きな盲点が、散歩後の過剰な洗浄です。愛犬の足を衛生的に保とうとするあまり、散歩から帰るたびにシャンプーやボディーソープでゴシゴシと洗い、ドライヤーの温風を至近距離で当てていないでしょうか。この過剰なお手入れは、皮膚を守るために必要な皮脂まで根こそぎ奪い、肉球の乾燥を自ら加速させる主因となります。