人間が社会的な生活を営む際、脳内では無数の領域がミリ秒単位で協調して機能しています。発達障害と定型発達の脳の違いを理解する鍵は、脳の一部が欠落しているのではなく、各部位を結ぶ情報伝達ネットワークの「同期タイミング」や「配線の密度」の差異にあります。
国立精神・神経医療研究センターなどの国内外の臨床研究チームが発表した知見によると、発達障害の脳の特徴は、外部刺激に反応する「中央実行ネットワーク(CEN)」と、安静時や内省時に活性化する「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」の切り替え機構に顕著に現れます。定型発達の脳では、集中が必要な作業に入るとDMNが抑制され、即座にCENへと主導権が渡されます。
ところがADHD当事者の脳内では、作業中にもかかわらずDMNの活動が十分に抑え込まれません。脳科学で解き明かす発達障害の理由として、この「アイドリング状態のシグナル混入」が指摘されており、本人がどれほど集中しようと努めても、無意識のうちに脳内で思考の脱線やノイズが発生してしまう物理的背景が存在します。
一方、ASD当事者の脳では、近接する局所的な神経回路の接続が非常に密である反面、脳の離れた領域間をつなぐ長距離ネットワークの連携が疎である傾向が確認されています。特定の細部や専門分野に対して驚異的な集中力や記憶力を発揮する一方で、文脈全体の統合や状況に応じた柔軟な思考の切り替えが困難になる背景には、こうした神経配線の物理的偏向が存在しています。