結論から言えば、ハーバード大学をはじめとする米国の高等教育機関に偏差値という指標は一切存在しません。日本の大学受験では、駿台や河合塾などの大手予備校が実施する全国模試の母集団データに基づき、合格可能性50〜60%を示す数値として偏差値が精密に算出されます。しかしアメリカには全国一斉の単一ペーパー入試で大学合否を決める仕組み自体がありません。
では、なぜ予備校関係者や教育メディアは「ハーバード大学は東大換算で偏差値80超え」と表現するのでしょうか。そこには、要求される学力到達点と合格枠の絶対的な希少性という2つの側面があります。
国内最難関とされる東京大学理科三類(医学部)の駿台全国模試における偏差値はおよそ78〜80前後で推移しています。これは全国のトップ層が集う母集団の中で上位0.1%未満に位置する驚異的な水準です。しかし、ハーバード大学が求める学力レベルは、全米および世界中から集まる数十万人の英才たちの頂点に立つ必要があります。共通標準テスト「SAT」や「ACT」でほぼ満点を叩き出した上で、高校時代の成績(GPA)は4.0満点(オール5)が事実上の初期スタートラインとなるのです。
さらに決定的なのは、学力試験で満点を取っても合格が全く保証されないという点です。日本の東大入試であれば、二次試験で満点近いスコアを叩き出せば100%確実に合格を勝ち取ることができます。一方のハーバード大学では、「学力満点は一次審査を通過するための足切り免除手形」に過ぎません。その上で課外活動、リーダーシップ、エッセイ、推薦状、面接などを総合評価されるため、突破難易度の心理的・実質的負荷を日本の入試システムに無理やり当てはめた結果、「東大理三以上の偏差値80超」という比喩表現が定着したのです。