そもそも、なぜ冷凍庫で凍らせて使う冷却剤がニオイ消しとして機能するのか。その鍵を握るのが、中身の約98%を占める水分と、残り約2%を構成する高吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウムなど)です。このポリマーは自重の数百倍から最大約1000倍もの水分を抱え込む性質を持ち、紙おむつや生理用品、農業用の保水材などにも広く用いられています。
保冷剤の封を切り、常温で空気に触れさせると、ゲル状に膨潤したポリマーの網目構造が表面に微細な凹凸を露出させます。この微細な隙間に空気中の悪臭分子が入り込んで閉じ込められるのが、高吸水性ポリマーの消臭メカニズムの正体です。活性炭が小さな孔にニオイ分子を閉じ込めるのと同様の「物理吸着」と呼ばれる現象であり、決してオカルト的な民間療法ではなく、物理現象に基づいた一定の効力を持っています。
ただし、ここで混同してはならないのが「市販のゲル状消臭剤」との決定的な性能差です。ドラッグストア等で販売されている市販消臭剤は、基材となるポリマーに加え、悪臭成分(酸性・アルカリ性)に化学反応を起こして無臭物質に変える中和剤や、植物由来のフラボノイド、抗菌剤が最初から高濃度で調合されています。一方で保冷剤の中身は、あくまで「水と保水ポリマー」のみです。物理的に吸着できる容量には限界があり、周囲の空気循環や湿度の影響をダイレクトに受けるため、市販専用品と同等の劇的な消臭力を期待するのは過信といえます。