中部山岳地帯の郷土料理である五平餅ですが、恵那市周辺で供されるものは他地域と明確に異なる独自の進化を遂げてきました。最大の差異は、その形状とタレの配合構成にあります。
長野県南部や岐阜県飛騨地方では、平たい木べらにご飯を小判形に巻き付けた「わらじ型」が広く知られています。しかし、岐阜県恵那市や中津川市を中心とする東濃地域では、串に3つの平たい丸餅を通した「団子型(三玉型)」が圧倒的な主流です。この形状は、江戸時代に中山道の宿場町や城下町を行き交う旅人や町人が、片手で手軽に歩きながら食べられるように工夫された名残とされています。球体ではなく少し平たく潰して成形されているため、火の通りが均一になり、タレが餅の表面全体にしっかりと絡みつく構造上の利点を持っています。
そして、人々を虜にしてやまないのが「くるみダレ」の存在です。山間部で貴重な脂肪分・タンパク源であった自生の和胡桃や胡麻、さらに後年導入された落花生(ピーナッツ)をすり鉢で油が出るまで丁寧に擂り潰し、地元の溜まり醤油、砂糖、みりん、地味噌と合わせて丹念に練り上げられます。香ばしい炭火で二度焼きされたタレは、表面がキャラメリゼのようにパリッと香ばしく、中はふっくらとした米の甘みとナッツの濃厚なコクが口いっぱいに広がります。この「甘み・塩気・ナッツの香ばしさ」の黄金比こそが、世代を超えて熱烈に愛され続ける理由です。