公式ファンブック『鬼殺隊見聞録・弐』で明かされた玉壺の人間時代の本名は「益荒(まなぎ)」。彼はとある貧しい漁村の生まれでした。しかし、その精神構造は生来の異常性を孕んでおり、村落社会の規範から完全に逸脱していました。
幼少期に両親が漁に出て水死した際、波打ち際に打ち上げられた無惨な遺体を目にした益荒は、悲哀ではなく「美しい」という常軌を逸した美意識を抱きます。この原体験が、彼の魚類に対する偏執的なオブセッションと、死肉を加工して造形物へ昇華させる猟奇的感性の起点となりました。奇怪な魚の死骸を集めて壺に詰め込むといった奇行を繰り返す益荒は、村中から「忌み子」として徹底的に孤立していったのです。
決定的な破滅は、村の子供からのからかいを発端に訪れます。激昂した益荒はその子供を惨殺し、自らの手製である壺の中に遺体を押し込みました。我が子の変わり果てた姿を見た親により、益荒は漁具の銛(もり)で滅多刺しにされ、瀕死の状態で放置されます。死の淵を彷徨い、息絶える寸前に現れたのが鬼舞辻無惨でした。常軌を逸した残虐性と死への執着を買われた益荒は血を分け与えられ、上弦の伍「玉壺」へと変貌を遂げたのです。