「歴代で一番面白い最高傑作はどれか」という問いに対して、ファンの間では時代ごとに異なるマスターピースが挙げられます。ギャグのキレ、家族愛、冒険活劇、SF的スペクタクルなど、求める要素によって頂点は分岐しますが、総合評価でトップに君臨し続ける作品群には明確な共通項が存在します。
初期の傑作として映画ファンの心を掴んで離さないのが、1996年公開の『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(本郷みつる監督)です。ファンタジーと不気味さが同居する世界観の中、終盤に繰り広げられる「トランプのババ抜き対決」や、オカマ魔女ジョマとマカオとの息もつかせぬ「追いかけっこタワーチェイス」は、アニメーション史に残る名シーンとして今なお語り草になっています。テンポの良いギャグとスリリングなアクションの黄金比は、初期シリーズの頂点と評されています。
一方、2010年代以降の最高傑作として名高いのが、2014年公開の『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』です。脚本家・中島かずき氏と高橋渉監督がタッグを組んだ本作は、父親たちの威厳失墜をテーマに据えつつ、「本物の父親とは何か」「記憶とアイデンティティ」という重厚な哲学的主題に踏み込みました。腕相撲対決に込められた親子の情愛は、多くの父親世代の涙腺を決壊させています。
笑いに特化したエンタメ性を求めるなら、2003年の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』が外せません。朝の食卓の最高級焼肉を食べるためだけに熱海を目指すという極限までシンプルな動機から、疾走感あふれる逃走劇と強烈な顔芸ギャグが炸裂する、純度100%のノンストップ・コメディです。