なぜここまで急速に賃金の底上げが強行されているのか。最低賃金引き上げ決定理由は、複合的な経済要因が絡み合っています。最大の引き金は、エネルギー価格や輸入原材料の高騰による歴史的なインフレです。食料品や日用品の価格が跳ね上がる中、実質賃金が目減りし続ければ地域経済の屋台骨である個人消費が完全に冷え込みます。政府と厚生労働省は「賃金と物価の好循環」を実現すべく、審議会を通じて大幅な引き上げ方針を強力に主導してきました。
しかし、支払う側の岐阜県内中小企業からは悲痛な叫びが上がっています。帝国データバンク岐阜支店などの調査でも明らかなように、県内企業の多くを占める製造下請けや飲食・宿泊業、小売り現場では、人件費の上昇分をそのまま取引先への納入価格や最終商品の販売価格に転嫁(価格転嫁)できていません。利益率が圧迫された経営者が「これ以上の賃上げは事業継続を揺るがす」と訴えるのは無理からぬ実情です。
それでも法律の遵守は絶対であり、最低賃金法違反と罰則の規定は極めて重く設計されています。
- 最低賃金法第40条:地域別最低賃金未満の賃金しか支払わなかった事業主には、50万円以下の罰金が科されます。
- 労働基準法第24条違反:全額払いの原則に違反したとみなされ、労基法第120条に基づき30万円以下の罰金が併科されるリスクがあります。
- 未払い賃金の遡及請求:退職後であっても、労働者は過去3年間に遡って最低賃金との差額および遅延損害金を一括請求する正当な権利を有します。
労働基準監督署の定期監督や内部通告によって違反が発覚した場合、追徴金の支払いだけでなく、悪質なケースでは企業名が公表され、採用市場において致命的な社会的信用の失墜を招くことになります。