なぜこれほどまでに、人々はこの一杯に心を奪われるのだろうか。単に「美味しいカフェ・ドリンクである」という理由だけでは、20年に及ぶ熱狂的なブームを説明しきれない。
五感と記憶は深く結びついている。温かいシナモンやナツメグの芳香は、幼い頃に過ごした温かな家庭の思い出や、深まる秋のノスタルジックな風景を無意識に呼び覚ます。飲食業界の専門家は「味わうこと以上に、秋という季節の訪れを体感するための個人的な儀式になっている」と分析する。一杯のカップを両手で包み込む行為そのものが、猛暑を乗り越えた自分へのご褒美であり、季節の変わり目を祝うハレの瞬間なのだ。