指揮者としての華々しい活躍があまりに有名なため、一部では「指揮活動に専念している実演家」と誤解されるケースも少なくありません。しかし、杉山陽一氏の真骨頂は、国際的な評価を受ける作曲家としての側面にあります。
これまでにヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ、ヨーロッパ各国の主要音楽祭や名門アンサンブルから委嘱を受けて数々の作品を発表してきました。代表曲として知られる室内楽曲や管弦楽作品群(『Barcaruola』など)では、イタリア仕込みの洗練された色彩感と、徹底的に削ぎ落とされた静謐な音響が共存しています。
「現代音楽の作曲家=耳障りで不協和音ばかりを並べる」というステレオタイプなイメージは、彼のスコアには当てはまりません。父親である詩人の詩情にも通じるような、沈黙と響きが織りなす繊細な陰影は、欧州の評論家たちから「聴く者の記憶の深層を揺さぶる音の建築」と激賞されています。指揮活動で培った「楽器の鳴り響きへの物理的な理解」が、そのまま自らのスコアメイキングへと還流しており、この二刀流の循環こそが彼独自のアートを生み出しています。