「階段の上り下りが楽になれば、親も自分たちも安心して暮らせる」という期待を抱いて導入される設備でありながら、ネット上の相談掲示板や介護家族のコミュニティでは「家庭用階段昇降機を設置して後悔した」という生々しい吐露が後を絶ちません。現場を取材すると、カタログの美観や機能説明だけでは見えてこない、生活動線と身体機能のミスマッチが浮き彫りになります。
最も多く挙げられる後悔の理由は、階段スペースの圧迫による同居家族の歩行ストレスと転倒リスクの増加です。一般的な木造住宅の階段幅は75〜80cm程度ですが、レールといすを設置すると、座面を折りたたんだ状態でも階段の内側に約25〜35cm張り出します。結果として健康な同居家族が歩くための有効幅は45〜50cm前後にまで狭まり、「夜間に階段を下りる際、足元が見えにくくて踏み外しそうになった」「大きな洗濯カゴや布団を持って上り下りできない」といった二次的な生活障害を引き起こすケースが目立ちます。
二つ目の要因は、安全基準に基づく「昇降スピードの遅さ」です。建築基準法や業界基準により、いす式階段昇降機の速度は分速9m以下(秒速0.15m程度)に規制されています。1フロアの上り下りに1分〜1分半ほどかかる計算になりますが、これが想像以上の精神的障壁となります。実際に利用した親世代の手記には、「乗っている時間がもどかしく、家族が忙しそうにしていると申し訳なさを感じる」「結局、手すりにつかまって自力で歩いてしまい、ほとんど使わなくなった」という本音が綴られています。
さらに深刻なのが、「設置からわずか半年で利用者が車椅子生活になり、座面への移乗すら困難になって施設へ入所した」という身体機能の急変によるミスマッチです。高額な初期投資を行った直後に使われなくなり、残されたのは狭くなった階段と高額な撤去費用の負担という、あまりに皮肉な現実に直面する家族が少なくありません。