徳光和夫という人物の底知れない人間的魅力と破天荒さを象徴するのが、半世紀以上にわたって語り継がれる競馬に対する並外れた執着と借金伝説です。自身が出演するバラエティ番組や自著において、生涯で競馬に注ぎ込んだ金額は「数億円単位にのぼる」と公言して憚りません。
日本テレビの局アナ時代、給料袋を受け取ったその足で競馬場へ直行し、最終レースが終わる頃には中身をすべて擦って帰りの電車賃すらなくなったという逸話は、昭和のテレビ界における伝説として語り草になっています。フリー転身後もその熱狂ぶりは衰えず、時には知人や関係者から資金を用立ててまで馬券を買い求めたというエピソードは、現代のコンプライアンス感覚から見れば完全にアウトな領域です。それでも彼が破滅することなく芸能界のトップに君臨し続けられたのは、それを補って余りある圧倒的な稼ぎ力と、卓越したアナウンス技術があったからに他なりません。
徳光を語る上でもう一つ欠かせないのが、読売巨人軍(ジャイアンツ)に対する狂信的な愛です。『ズームイン!!朝!』の看板コーナー「プロ野球いれコミ情報」で巨人が勝利すれば満面の笑みで小躍りし、敗北すれば番組冒頭からお通夜のような沈痛な表情で黙り込む姿は、アナウンサーに中立性が求められていた当時の常識を完全に覆しました。勝敗に一喜一憂して号泣するその姿は、のちの『24時間テレビ』で定着した「涙の徳光」の原点ともいえます。感情の振れ幅を包み隠さず画面に投影するスタイルこそが、徳光のブランドを築き上げました。