空手の組手を正しく理解するうえで避けて通れないのが、全日本空手道連盟(全空連・JKF)が統括する「伝統派空手」と、極真会館を源流とする「フルコンタクト空手」の構造的な違いです。両者は同じ「空手」という看板を掲げながらも、ボクシングとレスリングほどに戦術思想と評価基準が乖離しています。
伝統派空手の組手は、基本的に技を当てる直前でコントロールする、いわゆる「寸止め(スキンタッチ〜ノンコンタクト)」を基本としたポイントマッチです。オリンピック競技や国体で採用されるルールでは、技の極め(きめ)、スピード、正しい姿勢、気迫、間合い、そして残心(ざんしん:打撃後の油断のない構え)が厳格に審査されます。技の難易度に応じて「一本(3点:上段蹴りや倒した相手への突き)」「技あり(2点:中段蹴りなど)」「有効(1点:中段・上段への突き)」が宣告され、制限時間内に8点差がつくか、時間終了時に高得点を挙げた側が勝者となります。
一方、極真会館をはじめとするフルコンタクト空手は、相手に直接打撃を加えて肉体的なダメージを与える「ノックダウン制」を採用しています。顔面への手技(正拳突き、裏拳、肘打ちなど)は危険防止のため固く禁じられていますが、下段回し蹴り(ローキック)、中段突き、膝蹴り、そして頭部へのハイキックは直接ヒットさせることが認められています。相手を3秒以上ダウンさせるか、著しく戦意を喪失させれば「一本勝ち」、打撃による一時的なダメージや足の効かされ具合で「技あり」が宣告されます。
両者のルールと競技特性の違いを体系的に整理したデータは以下の通りです。
なお、実際の稽古ステップとしては、いきなり自由に戦う「自由組手(じゆうくみて)」に入ることはまずありません。初心者段階では、攻撃側と防御側があらかじめ出す技(上段突き、中段前蹴りなど)を決めて受けと反撃を反復する「約束組手(やくそくくみて)」を徹底的に行い、打撃の軌道への反応と距離感を身体に叩き込みます。