四輪車市場の9割以上がDOHC一色となった2026年現在でも、SOHCが完全に淘汰される気配はありません。そこには、SOHCが今なお採用される決定的な理由が存在します。
最大の武器は、シリンダーヘッド部の圧倒的なコンパクトさと低重心化です。カムシャフトが1本で済み、付随するベアリングやスプロケット、カムホルダーも半減するため、エンジンの頂上部が非常に小さく、軽くなります。これはエンジンルームのボンネットフードを極限まで下げて歩行者保護性能を高めたい乗用車や、車体上部の重量がダイナミックな操縦性に直結するバイクにとって、計り知れないメリットです。
実際、二輪車市場に目を向けると、ホンダのグロムやスーパーカブシリーズ、レブル250などのベストセラーから、ヤマハのセロー系(空冷単気筒)、さらには大排気量クルーザーに至るまで、SOHCエンジンが主力として元気に走り続けています。
コミュニティやライダーコミュニティで語られるバイクにおけるSOHCとDOHCの乗り味の比較でも、極めて明確な評価が下されています。
「DOHCの250ccクォーターマルチ(4気筒)は、1万回転を超えてからの甲高い鳴き声と突き抜ける加速が病みつきになる。だが、林道ツーリングや街中の信号待ちからの発進では、単気筒SOHCのほうが一発一発の爆発が地面を蹴り出す鼓動感が豊かで、クラッチミートの瞬間から粘り強く進んでくれるから圧倒的に気楽」(都内在住のベテランライダー・40代男性)
また、ホンダが誇る「ユニカム(Unicam)バルブトレイン」のように、モトクロッサー(CRF450R)で採用された特殊なSOHC技術も語り草です。吸気バルブをカムで直打し、排気バルブのみローラーロッカーアームで駆動することで、DOHC並みの超高回転・大出力を維持しながら、ヘッドの横幅と高さを極限まで絞り込む設計思想は、世界中のエンジニアを唸らせました。無駄を削ぎ落とした合理性こそが、SOHCが愛され続ける本質です。