物語の中盤、エレンが「始祖の巨人」の力——すなわち「座標」を初めて発動させた瞬間を覚えているだろうか。ハンネスの仇であり、母の仇でもあるあの「笑顔の巨人」にエレンが素手で殴りかかった、あの極限の場面だ。
当時は誰も理解していなかった。なぜエレンが王家の血を引かないにもかかわらず始祖の力を扱えたのか。その答えこそが、ダイナが無垢の巨人としてそこに存在していたという奇跡的な符合だった。始祖の力を行使するには「王家の血を引く巨人」との接触が不可欠という残酷なルール。エレンの復讐心とダイナの残骸が交差した瞬間、世界の歴史は不可逆の破滅へと舵を切ったのである。