インターネット上や愛犬家のコミュニティで「ゴールデンはなぜこんなにも短命なのか」と悲痛な声が絶えない背景には、決して単なる印象論ではない確固たる医学的証拠が存在します。最大の決定打は、全犬種の中でも群を抜いて高いがん死亡率(約50〜60%)です。
米国で3,000頭以上の個体を出生から生涯にわたって追跡調査している「モリス・アニマル財団(Morris Animal Foundation)のゴールデン・レトリバー・ライフタイム・スタディ(GRLS)」の中間報告でも、同犬種の死因の半数以上が悪性腫瘍であることが実証されています。とりわけ飼い主が警戒すべき凶悪な二大疾患が存在します。
一つ目は、血管の内皮細胞から発生する血管肉腫(けっかんにくしゅ)です。脾臓や心臓に好発するこのがんは、初期症状が全くと言っていいほど現れません。ある日突然、腫瘍が破裂して腹腔内や心膜腔に出血し、急性貧血やショック状態で倒れて救急搬送されるケースが後を絶ちません。発見時にはすでに遠隔転移している確率が高く、極めて予後が厳しい「サイレントキラー」として恐れられています。
二つ目は、血液のがんである悪性リンパ腫です。下顎(あごの下)、頸部、膝の裏などの浅表リンパ節がコリコリと硬く腫れ上がるのが典型的な兆候ですが、痛みを感じないため飼い主が気づくのが遅れがちです。多中心型リンパ腫の場合、無治療では数週間から1〜2ヶ月で急変するため、疑わしいしこりを発見した際の即時生検が命運を分けます。
さらに見逃せないのが、遺伝的素因を強く受ける股関節形成不全の存在です。大型の骨格を支える関節に緩みが生じるこの病気自体は直接の死因にならないものの、痛みから運動を拒絶するようになり、筋肉の衰弱と急激な肥満を招きます。歩行不能になった大型犬は急速に心肺機能や代謝を落とし、結果として余命を大幅に縮めてしまう負の連鎖を引き起こすのです。