ネット上でミームとして一人歩きしている「矢木に電流走る」という言葉だが、その出所は竹書房の専門誌『近代麻雀』にて長期連載された福本伸行氏の代表作『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』の単行本第1巻・第3話「逆転」から第4話「死線」にかけての攻防にある。
物語の発端は、借金を背負いヤクザとの命懸けの賭け麻雀で破滅寸前だった南郷のもとへ、ずぶ濡れの少年・赤木しげるがふらりと迷い込んできた夜に遡る。南郷の代打ちとして急遽卓に就いたアカギは、素人同然の佇まいでありながら、天性の勝負勘と冷徹な観察眼で局面を好転させていく。そこでヤクザ側が窮地を脱するために投入した刺客こそが、裏プロの代打ち・矢木圭次であった。
ネットユーザーの間ではしばしば「矢木が自ら叫んだセリフ」と勘違いされるケースが散見されるが、これは誤りである。正しくは、矢木がアカギの仕掛けた見えない罠の深さに気づき、背筋を戦慄が駆け抜けた瞬間を描写した劇中のナレーション「その時矢木に電流走る―――…!」という名フレーズである。大コマで描かれた矢木の硬直した表情と、雷撃のような劇的効果線が組み合わさったこの演出は、アカギ名言集の中でも屈指のインパクトを残した。