「欲張ってあれもこれもと願ってはいけません。心の中で最も純度の高い言葉をひとつだけ選び、神前に差し出すのです」――地元で何代にもわたり社を見守ってきた氏子の男性はそう語る。古くから「いちごんさん」の愛称で親しまれるこの神社では、余計な修飾語を削ぎ落とした真摯な一言こそが神に通じるとされている。
境内には、樹齢約1200年とされる巨大な御神木「乳銀杏(ちちいnombre)」がそびえ立つ。幹から垂れ下がる気根が乳房に似ていることから、子宝や母乳の出を願う参拝者が後を絶たない。授与所では、願いを一言だけ記して奉納する特別な絵馬や、身を守る伝統的なお守りが並び、近年は研ぎ澄まされた意匠の授与品を求めて遠方から訪れる若年層も目立つ。参拝の際は、まず手水舎で心身を清め、二礼二拍手一礼の基本作法を守りつつ、自らの核となる決意を簡潔に告げるのが鉄則だ。