空母単体の排水量や電磁カタパルトの搭載というハードウェアスペックだけを見れば、中国海軍は急速に米軍との差を縮めているように映ります。しかし、空母を「洋上の移動航空基地」として長期かつ激しい戦闘に耐えうるシステム全体として評価した場合、米軍との間には依然として越えがたい決定的な戦力差が存在します。
第1の急所は、「通常動力」と「原子力推進」に起因する航続力と兵站(ロジスティクス)の限界です。米海軍が誇るニミッツ級およびフォード級の原子力空母は、核燃料補給なしで約20年間にわたり洋上を動き続けることが可能です。一方、通常動力艦である福建は、高速航行を継続すれば数千トンの重油を数日で消費します。中国海軍は給油艦や補給艦を伴う強大な艦隊編成を余儀なくされ、燃料補給を担う補給艦が潜水艦や長距離対艦ミサイルに狙撃された瞬間に、空母打撃群全体の機動力がマヒする脆弱性を抱えています。
第2の急所は、艦載航空団のパイロット練度と実戦経験の圧倒的不足です。米海軍は第二次世界大戦以降、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、中東での各種作戦に至るまで、数十年にわたって「実戦下での空母発着艦・損害復旧(ダメージコントロール)」を繰り返してきました。対する中国海軍は、陸上模擬甲板や平時演習での飛行時間は増やしているものの、夜間悪天候下の過酷な発着艦や、戦闘被害を受けながら航空機を連続発進させる極限運用ノウハウの蓄積はゼロに等しいのが現状です。
第3の急所は、対潜水艦戦闘(ASW)の弱さです。空母打撃群の最大の天敵は、海中に潜む原子力潜水艦です。米海軍はバージニア級攻撃型原潜を直衛に配し、P-8A哨戒機やイージス艦と連接した多層的な対潜網を構築しています。中国海軍も最新の055型駆逐艦などで対潜ソナー網を急速に近代化させていますが、海洋音響データの蓄積深度や深海における静粛探知能力では米軍に一日の長があり、潜水艦による奇襲攻撃に対して依然として神経を尖らせています。