毛ガニの最大の醍醐味といえば、何といっても甲羅いっぱいに詰まった黄金色のカニ味噌だ。甲殻類学(カニ味噌・中腸腺)の観点から言えば、この部位は脳味噌ではなく、人間でいう肝臓やすい臓の役割を果たす消化器官である。だからこそ、脂質とアミノ酸が極限まで凝縮されており、他の蟹を圧倒する重厚なコクを生み出している。
このカニ味噌を最高の状態で味わうには、温度管理が命となる。冷えすぎていると脂の香りが閉じてしまい、逆に加熱しすぎると水分が蒸発してパサついてしまう。常温(約20度前後)に戻したカニ味噌に、ほぐした胴体の身を贅沢に和えて食べるのが、通が唸る至高の味わい方だ。さらに、味噌を食べ終えた後の甲羅に辛口の日本酒を注ぎ、弱火で軽く炙る「甲羅酒」を試せば、炭火の香ばしさと甲殻類の芳醇なエッセンスが溶け合い、極上の余韻に浸ることができる。