岐阜県西部の揖斐郡揖斐川町春日上ヶ流。山深い谷あいを縫うように登った先にある集落に、突如として視界が開ける広大な茶畑が存在します。これが天空の茶畑 上ヶ流茶園です。すり鉢状の山肌に沿って幾重にも連なる茶の畝(うね)と、それを支える古い石垣、そして眼下に広がる集落の佇まいが、空中都市マチュピチュのテラス(段々畑)と酷似していることから、自然発生的に「岐阜のマチュピチュ」と呼ばれるようになりました。
この景観の根底には、700年以上に及ぶ揖斐茶の歴史があります。鎌倉時代末期から室町時代にかけて、京都・宇治から持ち込まれた茶の種子がこの山あいに植えられたのが始まりと伝えられます。春日地区は昼夜の寒暖差が大きく、朝夕に濃い山霧が発生するため、良質な茶葉が育つ理想郷でした。先人たちが気の遠くなるような年月をかけ、急斜面を開墾して石を積み、現在の壮大な茶園を作り上げたのです。
地元有志が「この素晴らしい景観と茶文化を後世に残したい」と2010年代半ばから遊歩道の整備に着手。地域住民の手づくりによる展望ルートが開通したことで、全国の旅行愛好家やカメラマンが足を運ぶ名所へと昇華しました。