ネット上の一部では「実弥は最後まで義勇を嫌っていたのではないか」「単なるビジネスライクな同僚に過ぎない」といった冷ややかな意見が散見されることがあります。しかし、作中の心理描写や公式ファンブックの裏設定を丹念に読み解くと、その見解は決定的な誤解であることが分かります。
二人の間に生じていたのは「憎悪」ではなく、極度の「認知の歪み」によるコミュニケーションのすれ違いでした。
義勇が発した「俺はお前たちとは違う」という言葉は、本人の内心では「俺は錆兎の代わりに生き残っただけの出来損ないであり、柱にふさわしくない」という極度の自己否定から出たものでした。しかし、誇り高く鬼殺隊に命を捧げてきた実弥からすれば、「自分たちを見下している傲慢な態度」と受け取られてしまったのです。
実弥自身もまた、最愛の母を自らの手で討ち、弟の玄弥を危険から遠ざけるために冷酷な態度を取り続けた過去を持っています。「大切な人を遠ざけるために不器用な態度を取る」という点において、実は二人は鏡写しのように酷似した心理構造を持っていました。根底にある不器用さが似通っていたからこそ、一度誤解が生じると長期間にわたって氷解しなかったというのが、両者の「不仲」の真実です。