100歳を超えても認知機能を保ち、大きな慢性疾患に倒れない「スーパーセンテナリアン(110歳以上)」や自立した百寿者を対象とした国内外の大規模コホート研究において、驚くべき事実が裏付けられています。多くの人が「長寿は生まれつきの強固なDNAで決まる」と考えがちですが、双生児研究などの解析によれば、寿命における遺伝の寄与率はおよそ20〜25%程度にとどまります。残りの75%以上は、環境要因と毎日の生活行動が握っています。
東京都健康長寿医療センターや慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターなどの長年にわたる臨床現場のデータが示す百寿者の共通点は、極めて明確です。それは「全身の慢性微小炎症(インフラメイジング)のレベルが極端に低い」という生化学的特徴です。老化の主たる推進力は、自覚症状のないまま体内の毛細血管や組織をじわじわと傷つける低レベルの炎症反応にあります。健康な百寿者は、血液検査における高感度CRP(炎症マーカー)やアディポネクチン(長寿ホルモンと呼ばれる善玉物質)のバランスが、通常の70代・80代よりも良好に保たれているケースが珍しくありません。
取材現場で耳にする百寿者本人の肉声にも、その裏付けが宿っています。「毎朝決まった時刻に庭に出て土を踏む」「嫌なことは一晩寝たら綺麗さっぱり忘れる」といった語り口は、単なる精神論ではありません。体内時計を狂わせず自律神経の乱れを防ぎ、コルチゾール(ストレスホルモン)による免疫系の疲弊を回避する、理にかなった身体管理そのものです。病にかからない体質は天から降ってきた奇跡ではなく、微小炎症をくすぶらせない日々の積み重ねが生み出しています。