教育現場や民間アンケートの取材を進めると、多くの大人が「声」の筆順に関して人知れず恥ずかしい経験をしている実態が浮かび上がってきます。
大手Q&AサイトやSNS上の声を検証すると、「結婚式の受付で芳名帳に住所と名前を書く際、ふと『声』の字で手が止まり、横にいた配偶者に書き順がおかしいと突っ込まれた」「職場のホワイトボードでプレゼン中、部下の前で下半分を右から書いてしまい、いたたまれない空気になった」といった投稿が散見されます。東京都内の書道教室講師は、現場でのリアルな実態について次のように語ります。
「教室に通われる30代から50代の受講生に初回実力テストとして『声』を書いていただくと、およそ4割以上の方が下半分の左右順序を逆に書くか、上を完全な『土』として認識しています。子どもの頃に丸暗記した記憶は、手書きの頻度が落ちると視覚的なシルエットだけの記憶に変質してしまいます。その結果、似た形状の『売』や『走』などの書き順と混同し、独自の変形筆順で固定化されてしまうのです」
大人世代が間違えやすい漢字の筆順において、字形の単純な文字ほど「間違ったまま何十年も過ごせてしまう」という盲点があります。誰からも指摘されないまま人前で披露し、思わぬところで教養や几帳面さを疑われてしまうリスクは看過できません。