なぜ人を殺してはいけないのか?法学・哲学・脳科学が導く決定的な理由

なぜ人を殺してはいけないのか?法学・哲学・脳科学が導く決定的な理由

なぜ人を殺してはいけないのか?法学・哲学・脳科学が導く決定的な理由の詳細について、最新情報を基に徹底解説します。

法学が「外的な強制力(ペナルティ)」によって殺人を抑止するのに対し、哲学・倫理学は「個人の内面的な論理整合性」から殺人の不条理を証明しようと試みてきました。その最高峰に位置するのが、ドイツの哲学者イマヌエル・カントの倫理思想です。予備校講師の畠山創氏ら多くの教育者がカントの論理を引用するように、カントは感情や宗教の戒律に頼らず、純粋な理性によってこの問題に解答を与えました。

カントは、道徳の根本原理として「定言命法(ていげんめいほう)」を提示しました。それは、「あなたが取ろうとしている行動ルール(格率)を、世界中の全員が同時に採用したとしても、破綻なく世界が成り立つかどうかを考えよ」というテストです。もし「気に食わない相手は殺害してもよい」というルールを全人類が普遍的に採用したと仮定しましょう。その瞬間、あなた自身も他者から殺害の対象となり、あなたの命も存続できなくなります。つまり、「私は生きたいが、相手は殺す」という身勝手な主張は、論理学的に明らかな自己矛盾を引き起こすのです。

さらにカントは、「人間を単なる手段として利用するのではなく、常に目的として扱え」と命じました。自分の欲望の充足、怒りの発散、あるいは金銭目的のために他人の生命を手段として奪う行為は、人間が本来持っている理性的な主体性を根底から踏みにじる行為です。殺人が悪とされるのは、「お互いを目的として尊重し合わなければ、人間という知性的存在が成立しなくなる」という、哲学的な必然性があるからにほかなりません。

石川 優花
著者

石川 優花

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。