靴を脱いだ足の裏を見て、まるで虫食いや軽石のように1〜7ミリ程度の小さなくぼみ(クレーター)が密集している光景は、強い視覚的ショックを与えます。英語圏で「Pitted keratolysis(ピッテッド・ケラトライシス)」と診断されるこの疾患は、皮膚科学において足裏の表在性細菌性皮膚感染症に分類されます。
皮膚の最外層にある角質層は、本来ケラチンという強固なタンパク質で構成され、外部の刺激や乾燥から生体を守るバリアとして機能しています。しかし、密閉された靴の中で足裏が高温多湿状態に陥ると、皮膚に常在している特定の細菌(コリネバクテリウム属、キトコッカス・セデンタリウス、デルマトフィルス・コンゴレンシスなど)が異常増殖を開始します。
これらの細菌は、自らの栄養源として角質層を分解するために強力なタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を大量に分泌します。この酵素がケラチンを物理的に融解(消化・浸食)することで、足裏の角質に無数の小さな穴が掘り進められ、クレーター状のくぼみが形成されるわけです。
同時に発生する強烈な刺激臭の正体は、細菌がケラチンを分解する過程で副産物として生み出すイソ吉草酸(イソきっそうさん)や、揮発性の硫黄化合物(メチルメルカプタンやチオール類など)です。これらは納豆の臭気成分や腐敗臭そのものであり、通常の足の汗臭さとは比較にならないほどの破壊的な悪臭を放ちます。
臨床データによると、発症者は10代から50代まで幅広く分布するものの、特に新陳代謝が活発で皮脂や汗の分泌が多い20代に集中しています。また、長時間のブーツ着用、安全靴を履いて作業する現場従事者、運動部で密閉性の高いスニーカーを長時間履き続けるアスリートなど、靴内部の湿度が100%近くに達する環境に身を置く男性に発症率が高い傾向が顕著です。