2026年現在も、全国の旧車イベントやSNS上では「拓仕様のゼファー」や「武丸仕様のSR」を情熱的に組み上げるオーナーたちが後を絶ちません。しかし、ファンの声を取材すると、劇中のロマンとは裏腹に、極めて過酷な維持の現実が浮き彫りになります。
都内の専門店に通う40代のオーナーは、実体験を次のように証言します。
「ゼファー400に当時物のモリワキフォーサイトを組み込み、拓仕様に仕上げるだけで車体代とパーツ代を合わせて300万円近くかかりました。しかも純正部品の廃番が相次いでおり、キャブレターのインシュレーターやガスケット1枚を探すのにもネットオークションで数か月待つのが当たり前です」
また、武丸の「ルシファーズ・ハンマー」に憧れてSR400をフルチューンした別のオーナーは、維持管理の難しさを語ります。
「ボアアップしたビッグシングルは、キックスタート時の強烈なケッチン(キックバック)で足首を痛めるリスクと常に隣り合わせです。油温管理もシビアで、夏の渋滞に巻き込まれれば一発でオーバーヒートします。漫画の武丸のように狂気でアクセルを開け続けるには、プロのメカニック並みの整備知識と潤沢なメンテナンス資金が欠かせません」
ネット上の情報では「SRなら安価に手に入り、簡単に武丸仕様が作れる」といった言説が散見されますが、これは完全な誤解です。現代において劇中車を完璧に再現し、安全に公道を走行させるには、車両価格の1.5倍から2倍に及ぶレストア・強化費用を見込む必要があります。