大腸がん克服芸能人の劇的な復活劇に勇気づけられる一方で、この病の冷酷な現実を後世に伝えるために命を削って警鐘を鳴らし続けた先人たちの存在も忘れてはなりません。
俳優の今井雅之氏は、2014年秋に腸閉塞の診断を受けた後、末期の大腸がんであることが判明。2015年4月の記者会見では、激やせした姿で声を振り絞りながら「病室のベッドで『静楽死』を考えたほど痛みが激しかった」「もっと早く検査を受けていればよかった」と涙ながらに語り、そのわずか1か月後に54歳の若さで帰らぬ人となりました。あの衝撃的な会見は、大腸内視鏡検査の重要性を日本社会に強烈に刻み込む契機となりました。
世界的な音楽家である坂本龍一氏もまた、2020年に直腸がんが見つかった時点でステージ4、両肺や肝臓、リンパ節への広範な転移が確認されていました。2023年3月に逝去する直前まで、過酷な外科手術と化学療法を繰り返しながら、痛みを抑えつつピアノに向かい楽曲を残し続けた姿勢は、自らの命の有限性と芸術の昇華を体現したものでした。
生還を果たした著名人と惜しくも旅立った著名人の記録を丹念に照合すると、抗がん剤治療による末梢神経障害(手足のしびれ)や激しい倦怠感、味覚障害といった肉体的苦痛に加え、「再発の影に怯える心理的孤立」がいかに過酷であるかが浮き彫りになります。サバイバーたちが口を揃えるのは、「自分ひとりで抱え込まず、医療従事者や家族と弱音を共有できる環境の確保が生存意欲を維持する鍵だった」という率直な事実です。