「はにゃ」を語る上で欠かせないのが、丸山が演じる美術部員「井上千晶」というキャラクターの存在だ。とぼけた表情、独特の間、そして不都合な質問をすべて煙に巻く絶妙な回避術。彼女の立ち振る舞いは、過剰な同調圧力が漂う現代社会に対する皮肉めいたユーモアでもあった。
井上千晶の造形について丸山は、身近に存在しそうな人間味と狂気のギリギリの境界線を狙ったと語る。自分の失敗を責められたとき、素直に謝るでもなく反論するでもなく、「聞こえなかったフリ」と「無邪気な無知」を装う。その極致として発せられた言葉こそが、あのフレーズだった。
観察眼の鋭さと、人間観察から抽出されたリアリティ。だからこそ井上千晶というフィクションは、観客の日常の記憶と瞬時に接続し、強烈な共感と笑いを生み出すことに成功したのだ。