グループサウンズ隆盛期における『想い出の渚』誕生秘話は、当時の音楽シーンにおける一大転換点でした。寺内タケシとブルージーンズのリズムギタリストとして腕を磨いていた加瀬邦彦は、「自分たちの手で、若者がストレートに共感できる新しい日本のポップスを作りたい」という強烈な情熱を抱き、バンド脱退を決意します。
楽曲のモチーフが閃いたのは、加瀬が愛車を走らせて訪れていた神奈川県・葉山の海岸でした。寄せては返す波の音とどこか切ない夕景のコントラストから、あの印象的な旋律が脳裏に浮かび上がったと当時の手記や回顧録で語られています。加瀬はすぐさま仲間を集め、ボーカル兼ドラムの植田芳暁、リズムギターの鳥塚しげき、ベースの島英二とともに「ザ・ワイルドワンズ」を結成しました。
想い出の渚の発売年は1966年(昭和41年)11月5日。東芝音楽工業(現・ユニバーサルミュージック)からリリースされた同曲は、瞬く間に100万枚を超えるミリオンセラーを記録します。当時としては極めて珍しかった12弦アコースティックギターの繊細な響きと、ドラムの植田がメインボーカルを担当しながら叩くという斬新なステージングは、お茶の間に鮮烈な衝撃を与えました。