大学や養成所を卒業した新人は、ほぼ例外なく権禰宜としてキャリアをスタートさせる。境内清掃、参拝者の祈祷受付、お札やお守りの授与、日々の祭祀の準備など、文字通りの下積みから経験を積む。
権禰宜から禰宜への昇格には、長年の実務経験と神社への貢献、そして何より宮司からの信任が必要となる。さらに禰宜から宮司へと登りつめるには、空席が生じるタイミングや総代会(氏子の代表組織)の推薦、神社本庁による任命承認が不可欠だ。
日本の神社界では古くから社家の世襲が色濃く残っている。しかし、世襲だからといって無条件に宮司になれるわけではない。氏子総代との信頼関係が破綻していたり、宗教法人法上の適格性を欠いたりすれば、後継ぎであっても禰宜止まり、あるいは就任見送りとなる事例は後を絶たない。神事の技術だけでなく、地域コミュニティをまとめ上げる高度な政治力と人間性が試される世界だ。