耳瘻孔(正式名称:先天性耳瘻孔)とは、耳介の周囲に小さな針穴のような孔(開口部)があり、その奥に複雑に入り組んだ袋状の管(瘻管)が皮下深くまで伸びている先天性の形成異常です。最も多く見られる位置は「耳輪脚(じりんきゃく)の前方」と呼ばれる、耳の付け根のやや上側の窪みですが、耳たぶや耳の後ろに形成されるケースも存在します。
耳瘻孔が生じる根本的な原因は、母体内で胎児の体が作られる初期段階(受胎後4週〜8週頃)の形態形成異常にあります。人間の耳は、胎児期に「第1鰓弓(さいきゅう)」と「第2鰓弓」と呼ばれる組織の突起群(耳介結節)が複雑に合体・癒合して形作られます。この突起同士がぴったりとくっつき合う過程で、何らかの理由によりごくわずかな隙間が閉じ残ってしまうことで、皮膚が袋状に陥入したまま取り残され、耳瘻孔が形成されます。
「親の妊娠中の過ごし方や生活習慣に問題があったのではないか」と自責の念を抱く親御さんもいますが、これは器官形成期の偶然の癒合不全によるものが大半であり、特定の外的行動が直接の引き金になるわけではありません。
遺伝的な要因に関しては、片耳だけにできる「片側性」の多くは遺伝性のない孤発例ですが、両耳にできる「両側性」や家系内に複数人が持っている場合は、常染色体顕性(優性)遺伝の形式をとることが知られています。親が保因者である場合、子どもに遺伝する確率は約50%と試算されています。新生児健診や乳幼児健診で初めて指摘されて驚くケースも多いですが、穴があること自体は直ちに健康を害する病気ではありません。