図面の記号一つで、工場の生産ラインや建設現場が混乱に陥るケースは少なくありません。その代表格が「全周溶接(〇記号)」と「現場溶接(旗記号 ⚑)」の誤用です。
全周溶接は、部材の外周全体を一筆書きのようにぐるりと溶接する指示です。一見すると強度が最も高くなる安全な指示に見えますが、角パイプの端部に蓋プレートを全周溶接する場合、内部の空気が溶接熱で急激に膨張します。逃げ場を失った高温空気は、溶接ビードの最終接合部から吹き出し、ブローホール(気孔欠陥)やピットを強制的に発生させます。最悪の場合、部材が破裂する事故にもつながるため、気密テストを行わない構造物であっても「空気抜き穴(エアー抜き孔)」を設けるか、全周溶接を避ける設計配慮が求められます。
一方、現場溶接を示す「旗記号」は、工場内ではなく製品の据付現場で溶接することを指示する記号です。この旗記号が欠落していると、工場側は「すべて工場内で溶接して完成させる製品」と判断し、トレーラーに積載できない巨大な構造物のまま組み立ててしまいます。逆に、工場で施工すべき部位に誤って旗記号を付けると、劣悪な環境の現地で高難度のアーク溶接を強いられ、施工品質の低下と施工コストの跳ね上がりを招きます。