一度聞いたら忘れられない店名を持つ「ばかなる亭」ですが、その名前に込められた意味や由来には、飲食と空間づくりに対する深い哲学が隠されています。単なるウケ狙いではなく、ヨーロッパの古典文化と日本の大衆酒場文化が絶妙に交差した背景が存在します。
語源の核となっているのは、ローマ神話の酒の神バッカス(Bacchus)を称える古代の祝祭劇「バッカナール(Bacchanal)」。この言葉は「愉快な酒宴」「気兼ねなく楽しむ狂宴」を指す言葉として西洋の飲食文化に根付いています。そこに日本語の「肩肘張らず、少し馬鹿になって楽しむ」という開放的なニュアンスを重ね合わせ、親しみやすい「亭」を冠したのが店名のルーツです。
「日々の重圧や堅苦しい肩書きを脱ぎ捨てて、誰もが素の自分に戻って美味い酒と飯を堪能できる場所にしたい」という創業時の思いが、このユニークな屋号に結実しています。暖簾や扉をくぐると、どこか懐かしく温かみのある木の温もりと、厨房から漂う芳醇な香辛料やワインの香りが広がり、訪れる者を迎えてくれます。