民藝運動の中核をなす概念が「用即美(ようそくび)」である。使うために作られた道具だからこそ美しく、美しさがあるからこそ愛用される。実用性と美しさは背中合わせの不可分な関係にあると説く。
高級な観賞用美術品ではなく、庶民が日常で雑多に使う器や家具。そこには製作者の自己誇示や作為が一切存在しない。ただひたすらに使い手の利便を追い求めて手作業を繰り返す中で、無意識のうちに美が結晶化する。名もない職人の無心の無我こそが、芸術家が狙って作れない「無名の美」を立ち上がらせるのだ。
2026年、アルゴリズムと最適化が支配する社会において、この思想は新たな解釈を獲得している。均一で完璧な工業製品の溢れる日常の中で、人の手の揺らぎが生み出す微細な個性に惹かれる人々が急増。使い込まれることで完成に向かう民藝品の性質が、現代デザインの最高峰として再評価されている。