背中一面のデザインを美しく完成させる上で、主モチーフと同じくらい重要な役割を果たすのが「額彫り」だ。額彫りとは、中央のメインとなるモチーフ(抜き彫り)の周囲を、雲、波、岩、桜、牡丹などの自然物で隙間なく囲む技法である。黒墨の繊細なぼかしによって奥行きと立体感が生み出され、背中全体が一つのストーリーを持つ絵巻物へと昇華する。
構図の切り取り方や見切り(彫りの境界線)の美しさは、作品全体の気品と完成度を左右する。背中の広大な面積をいかに贅沢かつ調和の取れたバランスで配置するか。そこに彫師の真のセンスと技術が露わになるのだ。