湯谷温泉の風景を決定づけているのが、川底が一面の岩盤で覆われた宇連川(通称・板敷川)だ。まるで木造建築の床板を敷き詰めたかのように平らな岩肌を、清流が滑らかに滑り落ちていく。この特異な地質が造り出す景観沿いに、数軒の温泉旅館が吸い付くように佇んでいる。
創業数十年を超える老舗宿の多くは、木造のぬくもりを大切に残しながらも、時代のニーズに合わせた改修を行ってきた。過度な豪華絢爛さではなく、自然との境界線をあいまいにした建築設計。窓を開ければ、清流のせせらぎが部屋全体に響き渡り、まるで川の上に浮かんでいるかのような錯覚に陥る。