沖縄のバス路線を語る際、利用者が最も混同しやすいのが「那覇バス」と「琉球バス交通」の差異です。現在、両社はともに北九州市に本社を置くタクシー最大手「第一交通産業グループ」の統括下にあり、本社の所在地(豊見城市字翁長)や案内窓口、経営首脳陣を共有しています。しかし、その出自と歴史は大きく異なります。
かつて「銀バス」の愛称で親しまれた旧那覇交通は、放漫経営と労使対立、さらにはモータリゼーションの進行による乗客減少が重なり、2004年に約130億円の負債を抱えて民事再生法を適用しました。この事業を第一交通産業が受け皿会社を設立して引き継いだのが現在の那覇バス株式会社です。その後、2006年には同じく経営再建下にあった旧琉球バスの事業も引き受け、株式会社琉球バス交通として再出発させました。
再建過程において第一交通産業が採った手法は、徹底したコスト管理と民間企業としての合理化でした。車両のスケールメリットを活かした一括購入、整備工場の統廃合、共通定期券の発行や那覇バスターミナル周辺の運行管理一本化を断行。長年赤字を垂れ流していた構造を黒字基調へと転換させました。
現在の役割分担としては、那覇市内を細かくカバーする市内線運行の主力を那覇バスが担い、本島中部・北部の名護方面や中長距離路線を琉球バス交通が担うという住み分けが維持されています。新しく整備された那覇バスターミナル(カフーナ旭橋直結)の乗り場案内においても、両社の共同運行便がシームレスに配置されており、過去の経営危機の痕跡を感じさせない合理的な運行体制が敷かれています。