「薬局で買える軟膏で治せないか」「自力で治癒するのではないか」と考える方は非常に多いのが実情です。結論から述べると、爪周囲炎の自然治癒が期待できるのは、患部にわずかな赤みがある程度の「極初期」かつ「化膿していない状態」に限定されます。
一度でも白や黄色の膿が目視できる状態(膿瘍形成)になると、細菌が密集したバイオフィルムや壊死組織のバリアに守られるため、体の免疫細胞や白血球だけでは細菌を排除しきれません。血流に乗って届くはずの防御反応が届かなくなるため、自然治癒を待つ行為は単に悪化と組織破壊の時間を稼ぐだけに終わります。
市販薬(OTC医薬品)の選択においては、含有されている有効成分を冷静に見極める必要があります。
- 抗生物質配合軟膏(テラマイシン、ドルマイシンなど):化膿性皮膚疾患用として、ポリミキシンB硫酸塩やバシトラシン、オキシテトラサイクリン塩酸塩などを配合した軟膏は、皮膚表面の細菌増殖を抑える一定の効果があります。傷口の周囲がうっすら赤い初期であれば、患部を清潔にして塗布することで沈静化する可能性があります。
- ステロイド配合外用薬の危険性:かゆみや湿疹用のステロイド(副腎皮質ホルモン)軟膏を自己判断で使用するのは極めて危険です。ステロイドには強力な抗炎症作用がある反面、局所の免疫力を低下させる作用があるため、細菌の爆発的な増殖を招き、一晩で病状を劇症化させるリスクがあります。
また、皮膚の角質層はバリアが厚く、外用薬の有効成分が皮下深部まで浸透するには限界があります。指先がズキズキと痛む段階では、皮膚科や形成外科で処方される経口抗生物質(セフェム系やペニシリン系、キノロン系など)による内服治療が不可欠です。血中から病巣へダイレクトに抗菌成分を届けることで、初めて細菌の増殖を根底から抑え込むことができます。