ヘルスケアに関心の高い層を中心に長年囁かれてきたのが、「納豆と生の卵白は食べ合わせが最悪である」という説です。この議論の発端となっているのが、ビオチンとアビジンの栄養阻害の真相にほかなりません。
納豆に豊富に含まれるビタミンB群の一種「ビオチン」は、皮膚や粘膜の維持、毛髪の健康に深く関与する必須栄養素です。一方で生の卵白には「アビジン」という糖タンパク質が存在し、これが消化管内でビオチンと強力に結合することで、体内への吸収をブロックしてしまう性質があります。この生化学的な反応が切り取られ、ネット上では「生卵と納豆を一緒に食べると髪が抜ける」「栄養がすべて台無しになる」という極端な言説へと飛躍して広まりました。
しかし、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」および日本食品標準成分表に照らし合わせると、実態は大きく異なります。成人のビオチン目安量は1日あたり約50μgであり、通常の食生活を送っていれば腸内細菌によっても合成されるため、日常的な食事で欠乏症を起こすリスクは極めて稀です。ビオチン欠乏による皮膚炎などを引き起こすには、毎日生の卵白を何十個も数カ月間にわたり過剰摂取し続けるといった極端な条件下でなければ成立しません。
それでも「吸収効率を極限まで追求したい」という合理的なニーズから、納豆に卵黄だけ入れる決定的な理由が支持を集めています。卵白を外し卵黄のみを合わせれば、アビジンの干渉を完全にゼロに抑えつつ、納豆の旨味成分であるグルタミン酸と卵黄のイノシン酸による相乗効果で、極上のコクを味わえるからです。
また、アビジンは熱に極めて弱いという決定的な性質を持ちます。70℃〜80℃以上の加熱によってアビジンは熱変性し、ビオチンと結合する能力を完全に失います。加熱調理したオムレツや卵焼きであれば、全卵を使っても栄養阻害の心配は一切ありません。ここで一度、卵と納豆の栄養効果詳細まとめとして、加熱状態による栄養動向と調理特性を客観データで整理しておきましょう。