一方、平安時代の古典文学へと目を転じると、「総角」は全く異なる切ない情念を帯びて立ち現れる。大文豪・紫式部によって執筆された『源氏物語』五十四帖のうち、宇治十帖の第47帖に与えられた題名こそが「総角(あげまき)」である。
この帖では、亡き八の宮の娘である大君(おおいきみ)と薫大将のすれ違う恋模様が描かれる。「あげまきに 長き契りを むすびこめて」と詠まれた和歌に象徴されるように、解けることのない運命の結び目や、永遠の愛への願いがこの二文字に託されている。古典文芸の文脈において「総角」は、単なる髪型や紐の形を超え、運命の不条理と気品ある哀愁を漂わせる象徴的な記号として定着した。