ネット検索において「世界最後の日々 太田出版」というキーワードで調べるユーザーが後を絶ちません。しかし前述の通り、本作を刊行した正規の出版社はイースト・プレスです。なぜこのような誤解が長年にわたって定着しているのでしょうか。
その背景には、山本直樹のキャリアにおける「太田出版」との深い結びつきがあります。太田出版は、雑誌『Quick Japan』での特集や、連合赤軍事件を克明に描いた代表作『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』の関連書籍、さらにはサブカルチャー系漫画の名著を数多く世に送り出してきました。そのため、アングラかつ重厚なテーマ性を持つ『世界最後の日々』も太田出版のラインナップであると無意識に思い込んでしまう読者が非常に多いのです。
著者の短編世界を正しく把握するために、イースト・プレスから刊行された自選集3部作のポジショニングを整理した比較表を作成しました。
このように、3部作はそれぞれ異なる切り口で人間の深淵を掘り下げており、最終作である本作において、個人の歪んだ関係性から「世界そのものの変容」へと射程が広げられていることが分かります。