表層的な物価比較だけでは見えてこない、現地で暮らして初めて痛感する「構造的リスクと見えないコスト」が存在します。
筆頭に挙げられるのが民間医療機関の法外な診療費です。タイには日本の国民健康保険のような包括的制度が外国人には適用されません。万が一の病気や事故で私立総合病院(バムルンラード病院やサミティヴェート病院など)の日本語対応デスクにかかった場合、初診料と簡単な血液検査、処方薬だけで10,000バーツ(約4.7万円)を超える請求を受けることは日常茶飯事です。盲腸の手術と数日間の入院で150万円〜200万円前後の請求に達することもあり、手厚い医療保険の加入費用は必須の固定費となります。
次に、ビザ維持にかかる間接コストです。観光ビザでの長期滞在の取り締まりは年々厳格化しており、正規の滞在手段としてリタイアメントビザや長期居住ビザ(LTR)、エリートカードなどを取得・更新するための費用やエージェント代行費、銀行口座への多額の預金拘束(80万バーツ等)など、制度的ハードルが年々跳ね上がっています。
さらに、酷暑期(3月〜5月)の電気代の高騰も深刻です。タイの電気料金は燃料価格高騰を反映して引き上げられており、24時間エアコンを稼働させると単身用のコンドミニアムでも月3,000〜5,000バーツ(約1.4万〜2.4万円)に達することが珍しくありません。日本の冬場の暖房代を凌駕する請求書に悲鳴を上げる在住者が後を絶ちません。