ネット上のQ&Aサイトや音楽掲示板では、「男女デュエットなら男性が下、女性が上を歌えば自然とハモれる」という言説が頻繁に見受けられます。しかし、『点描の唄』においてその認識は完全な誤解です。
本楽曲における最大の音楽的トラップは、主旋律とハモリの上下関係がサビの中で頻繁に入れ替わるクロスオーバー構造にあります。
多くのデュエット曲では「女性=主旋律、男性=3度下のハモリ」という固定配置が一般的です。ところが『点描の唄』のサビでは、女性が主旋律を歌っている背後で大森元貴がその上をなぞる「上ハモ」をファルセットで差し込んできます。さらに曲の後半では男性が主旋律を歌い、女性が上ハモを担当する場面へとスイッチします。
人間の耳は高いピッチの音を主旋律として認識しやすいという音響心理学的特性があります。そのため、男性が原曲通りに高い裏声で上ハモに入った瞬間、女性側が引きずられて音程を見失い、主旋律を歌っていたはずがいつの間にか男性の釣られ役になってしまう現象が頻発するのです。この「主客の逆転」こそが、難易度を跳ね上げている真の理由です。