国民的人気を誇っていたパンくんですが、成長とともにテレビ出演の機会は徐々に減少し、2012年9月に起きた予期せぬ事故によって完全引退を余儀なくされました。阿蘇カドリー・ドミニオンでのショー公演直後、パンくんが女性研修生に飛びかかり、重傷を負わせてしまうという痛ましい襲撃事件が発生したのです。
事故の真相として専門家が指摘したのは、チンパンジーという種の持つ生態と「性成熟」でした。パンくんは2001年10月生まれであり、事故当時は10歳を過ぎて大人のオスへと身体が大きく変化する過渡期にありました。チンパンジーの筋力は成人男性の数倍に達し、大人になると群れの序列争いや縄張り意識、野生の本能が急速に目覚めます。
どれほど人間に育てられ、穏やかな性格に見えても、思春期を迎えたオスのチンパンジーが本能的な衝動を完全にコントロールすることは極めて困難です。この事故を機に、パンくんはショーやテレビの世界から完全に退き、施設内で静かに余生を過ごす繁殖・飼育プログラムへと移行することとなりました。